擱筆(かくひつ)
- 意味:筆をおいて、文章を書くのをやめること・書き終えること
- 豆知識:「擱」は、「おく・やめる」などの意味を持つ漢字で、擱座=「船が浅瀬にのりあげること」という熟語があります。
「擱筆」と似たような熟語に「脱稿」があったなと、思い出し
違いを調べてみたところ、「脱稿」は「原稿を書き終えること」という意味でした。
単なる文章と原稿=「印刷したり口頭発表したりするための下書き」
というように、「書いているもの」に違いがあるようです。
タレント本
昔発売された、ジャニーズの暴露本を読んだことがあると書きましたが
(その記事はこちらです。→梨園もジャニーズも官邸も揺れてますね)
タレント本は、気が向くと読みます。
単純な好奇心から手に取り、下世話な野次馬根性で楽しみます。
ですから、買うなら古本屋さんになりますし
図書館にあれば、もちろん借りて読みますので
定価で買ったことは、ありません。
ジャニーズの暴露本には、芸能界の闇を感じましたが
気楽に読めるジャンルとして、ダイエット本があります。
芸能人が、ついつい不摂生を重ね太ってしまったあと
一念発起して運動したり食事制限をしたり、と必死の努力を積み重ね
きれいにやせていく過程が、非常に興味深く面白く読めます。
しかし、知り合いに編集者がいるのですが
その人が担当した、ある芸能人のダイエット本は
「ほとんど全部うそ」なんだそうです。
でも、結果的にやせてたよね?と、聞いたら
「徹底的にプロが管理して無理やり痩せてもらっただけで
本に書いてあったような運動はしてないし
そもそも書いたのは本人じゃないし」と言ってました。
こういう話を聞くまでもなく
ゴーストライターが書いてる率が高いでしょうから
タレント本は書いてあること、何もかもを真に受けず
適当に読み流して楽しむものだと思ってます。
でも、その芸能人はその後かなりの年月が経ってますが
リバウンドしている様子がありませんので
それなりに努力してるんでしょうね。(笑)
むき出し
今回読んだのは、漫才コンビEXITの兼近大樹さん著「むき出し」です。
図書館で借りてきました。
兼近さんといえば、広域強盗事件の容疑者と親交があったことで
世間をにぎわせましたが、その交流にも触れている小説形式の自叙伝です。
何を思ってこの本を書いたのかなーと、思うほど
暴力的で破壊的な少年期の不良行為が書かれています。
彼の中に線引きはあって、盗み、薬、タバコ、詐欺など
やらないと決めていることは、たくさんあるんですが
暴力と破壊行動が激しくて、不快感を覚えました。
そして、それを教師からとがめられたときの反応も
きわめて自己中、自分勝手な屁理屈で自分の非を認めず
そのまま中学を卒業していきます。
何がそうさせていたか、といえば根っこは貧困です。
お金がなくて、できないこと、持てないものがたくさんあるけれど
「俺ってすげえ!」って思われたい、という承認欲求から、
いきがり、強がり、結果的に不良行為につながっていきます。
根っこが貧困ですから、やはりこれは、どう考えても親の問題です。
その親のことは、大好きで恨んでいないようですが
生まれ落ちた環境そのものは、呪詛するように嫌っています。
「貧乏じゃなければ」と、何度も思うくだりが書かれているんですが
貧乏でも、常識を教えてくれる親がいれば、まだマシでした。
彼の場合の悲劇は、貧困に加え
家庭環境が劣悪で、親があまりに非常識だったことです。
初潮を迎えた妹さんの下着が汚れたままであったり
家の中にネズミがいっぱいいたり。
スナック勤めの母親を、小学生の兼近さんが
スナックまで迎えに行ったり
そのスナックで酔客の相手をいっしょにしたり
挙げていけばキリがないぐらい
愛情があったことは、伝わってきますが
「この親、ありえない」と、思う話が満載で、
まさに、親ガチャに外れた子どもの末路を
まざまざと見せつけられる本だなと、感じました。
常識
兼近さんが週刊誌で書かれた逮捕歴は
売春あっせんと、強盗容疑(不起訴処分になっています)ですが
売春の手伝い(というより元締め)は、したらいけない。
拘置所で出会った人を信用して、一緒に仕事をしてはいけない。
たとえそれが、生きるためであっても
してはいけないことがある。
こんなこともわからないまま、大人になっちゃったんだなあと
そこまでの経緯を読んでみて、なるほど、と納得しました。
彼自身、すべて自分がしてきたことで
隠すつもりもないようですし
この本の刊行は、広域強盗事件が起こるより前ですが
芸能人としての仕事は、かなり厳しいものになっていることでしょう。
兼近さんが、逮捕歴を暴露される前に
テレビの「自分は貧乏な家で育った」というテーマで
「ティッシュにマヨネーズをつけて食べていた」
と、話していて、それだけでも驚きでしたが
その行為を母親もいっしょになってしていた
と、話していたので、さらに驚いたことがあります。
兼近さんは、お母さんが大好きで大切にしているようなので
批判されたら、悲しむのかもしれませんが
親に常識がなければ、子に常識が教えられるはずもありません。
子どもといっしょにティッシュを食べる親です。
いえ、子どもにティッシュを食べさせる親です。
人を殴ったり蹴ったりしてはいけません。
モノを壊したらいけません。
こんな当たり前のことを、言い聞かせたこともなかったのでは?
と、思うにつけ、子どもにとっては
たいへんあわれな話だなと、同情します。
どこまで本当か?
さて、この本もタレントさんが書いた本ですから
話半分に受け止めるのが、適当なのかもしれません。
でも、おそらく全部本当のことなんだろうな、と思います。
本人のイメージをよくする要素は、ほぼないからです。
それは、ジャニーズの暴露本にも感じたことで
書いた本人が得をするのかどうか、わからないことならば
そこに、大きな嘘はないのだろうと思います。
むしろ、暴露本もそうですが、この「むき出し」も
書けなかったことが、たくさんあったかもしれません。
兼近さんは、留置所でピースの又吉さんの本を読んで
本を読むことを覚えます。
本を読むようになって、開けた世界があるから
同じような境遇にいる人に向けて
本を書いてみたのかもしれません。
人前に立つ仕事をしているからこそ
自分のすべてをさらけ出したかったのかもしれません。
なんにせよ、読後感は
「気の毒な人だなあ」に尽きます。
こういう境遇にいる子どもたちが
大勢いるのだろうと思うにつけ
やるせなくなってしまいます。