翌檜(あすなろ)

  • 意味:ヒノキ科の常緑高木
  • 豆知識:「明日はヒノキのような立派な木になろう」という意味で名付けられたという説があります。

♪あすな~ろ、あすな~ろ、明日はなろう~
 おおきーな ヒノキーに 明日はなろう~♪

この歌を、小学校の卒業式で歌わされました。
卒業文集の題名も「あすなろ」でした。
先生たちのこだわりが集約された卒業式だったといえそうです。(笑)

料理を扱う小説

小説には、いろいろなジャンルがありますが
わりと多く出版されているのが、料理をめぐる物語です。

小さなレストランに集うお客の人間模様だったり
料理人である登場人物の成長だったり
描かれる内容はさまざまですが
多くの場合、共通しているのは「いい話」であることです。

端的に表すなら、「ほっこりする物語」というもので
私はわりと、苦手です。(笑)

嫌いかというと、そういうわけでもないので
読み飽きた、というのが正しいかもしれません。
料理を食べたことによって、思い出がよみがえったり
かたくなだった心がすっと溶けていったりという展開が多いのですが
これって、料理がないとダメだった?と、感じることがあります。
ストーリーに無理やり料理をねじこんでいるような作品
逆に料理に無理やりストーリーをくっつけている作品など
料理にまつわる作品を書くことありきの小説は、そこそこおもしろくても
読んでいるうちに、たいてい途中で飽きてやめてしまいます。

また、そういう話かなと、思いつつ
わりと話題になった小説がkindleunlimited対象作品にあったので
どれどれ・・・と、読んでみたところ
そんな偏見がふっとぶ、深い物語でした!
タイトルだけで読むのをやめずによかった!
やはり、本は読んでみないとわからないよねー
と、読書初心者のような感想を持ってしまいました。(笑)

その小説はこちら

町田そのこさん著「宙(そら)ごはん」です。

https://amzn.to/3sPeKZS

この物語は、あなたの人生を支えてくれる

宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。

Amazon商品説明より

読み始めてすぐあたりは、「うーん、苦手かも・・・」と、感じました。
主人公の母親が、親としての自覚ゼロすぎて、うんざりしたり
登場人物の名前が「宙=そら」「花野=かの」「風海=ふみ」
と、キラキラネームばっかりで、私のような年寄りが読む小説ではないかも?
と、思ったりしたんですが、読み進めていくうちに、最初の印象は大きく覆り
登場人物ひとりひとりの背景や成長していく姿に、どんどんひきこまれていき
物語終盤では、悲しさや切なさに巻き込まれて、涙を流していました。

さすが、本屋大賞を受賞している作家さんの小説でした。
話題になり、売れる本には、やはり理由があるのだなと、納得でした。

親の物語

主人公が保育園児時代から始まり、大人になるまでが描かれますが
大勢登場する「親」にスポットが当てられている物語でした。

「毒親」要素を持っている親が多数登場し
親になっても人としての未熟さがある姿とともに
その親に翻弄される子どもたちの不安や葛藤が描かれています。

とはいえ、世界観は残酷ではなく、むしろ温かみがあります。
その「温かさ」を表している、唯一マトモと思われる大人が
料理人の「やっちゃん」で、彼が作り出す料理が、小説のアクセントになっています。

料理がなくても成り立つ話だけど、料理があることで
小説のテーマが引き立っていましたので
私が「読み飽きた」と思っているジャンルのそれとは
まったくちがうタイプのお話でした。

成長

子どもを産めば、自動的に誰もが親になりますが
親になっても、多くの人がまだまだ未熟者で
ときとして、自分のことで手一杯になり
子どもをないがしろにしてしまう。

それって、「ひどい!親失格!子どもが子どもを産むから!」
と、批判されていることですが
きっと、そういう親の方が多いのだろうと、感じました。

親だって、完成された人格で子どもを育てるわけじゃない。
だけど、人間は成長することができる、という
とても当たり前のことを、考えさせられる小説でした。

私も、未熟者のまま子育てをした母親でしたし、
今も、息子にしてみたらこうであってくれたら、
と思うところが多々あることでしょう。

深い話でしたし、泣ける話でしたが
読後感はとてもよく、この物語の中に
もっととどまっていたいと、思える良書でした。

この著者の作品を、もっと読んでみたくなったので
近々購入することになりそうです。





忘れん坊将軍

昭和39年生まれの59歳、専業主婦です。 新幹線、首都高速、武道館などなど同い年のものがたくさんあります。 還暦目前のせいか、あれもこれも忘れてしまう困ったちゃんです。