瀁瀁(ようよう)

  • 意味:はてしなく、ゆらめくさま
  • 豆知識:「瀁」=「あふれる・広い」などの意味を持つ漢字です。

「瀁瀁」から大河を、大河から中国の風景を連想しました。
日本にも利根川など、大河と呼ばれる川はありますが
やはり、黄河、長江など大陸の河が浮かびます。
中国に行ったこともないくせに、おかしいですね。(笑)

中国が舞台の小説

小川哲さんの「地図と拳」を読みました。

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物語の舞台は中国の満州です。

「満州」があった時代ですから、日清戦争後の1899年から始まり
第二次世界大戦終結後の1955年までの半世紀にわたる大河小説です。

ボリュームがすごい!

物語が終わるのは、625ページ目です。
読み応え抜群でした。

地図と拳

タイトルの「地図」は「国家」を「拳」は「武力」を表しています。
たくさんの登場人物が、それぞれ「地図と拳」について自問自答しつつ
戦争という大きなうねりにのみこまれていきます。

物語の核となるのは、架空の都市です。
その都市の誕生から成長にかかわった人々の群像劇でもあり
たいへんおもしろい小説でした。

国家とは、地図とは、建築とは、・・・
登場人物の脳内思考を文章で読んでいくわけですが
それぞれが、たいへん含蓄あるものになっていて
感心したり、読み直したり、しばし考えたり
おもしろい小説なのに、なかなか先に進めませんでした。

思考

たとえば、こんな一節がありました。

夏の東京を歩くたび、明男は人体という構造物の欠陥をひしひしと感じた。
大量の汗による気化熱で体温を下げるという非効率的な仕組みのせいで、人体は暑さに対してあまりにも脆弱だ。
熱を発散する仕組みに労力をかけているというのに、必死にかき集めたエネルギーの半分が体を温かくするために使われるというのも、ずいぶんと馬鹿な話である。
そうやって生み出した熱も、全身のほとんどが無毛なせいで、すぐにどこかへ飛んでいってしまうので、人体は暑さだけでなく、寒さにも弱い。
いったい何がしたいのか。
人体を設計した建築家がいたとしたら、その無能さを糾弾したくなる。

本文322~323ページより

この一節だけでも、「へー。こんなふうに考える人がいるんだ」
と、何度も読み返してしまいましたが
この人体の仕組みに対する考え方が、
「国際連盟と国家」の在り方につながっていきます。
そのようなロジックの展開がみごとで、
「なるほどねー!」と、感心する場面が山ほどありました。

お勧めなのか?

たいへんおもしろい本でしたが、
読むのであれば時間をしっかり確保する必要があります。

私は、読書のスピードが非常に速くて、たいていの小説は1日で読み終えます。
読みやすい本だと、1日に3冊読んでしまうこともあります。

でも、この本は読み終わるまで4日かかりました。
記憶にある限り、1冊の本にそこまで時間をかけたことは、ありません。
この本をいかにじっくり読んだかがわかります。

あらすじは、わりと簡単に説明できる物語ですが
おもしろさを説明するのは、困難です。
まさしく、文章を味わう醍醐味にあふれている小説なので
本が好きな方ならば、誰しもがじっくり堪能してしまうだろう作品です。

コスパ

読んでおもしろかっただけで、十分うれしいことなのですが
読了までに時間をかけたことに対して
「なんとコスパの良い本だ!」と、うれしくなりました。
本を読むのが好きなのに、読むのが速いせいで
「2000円も出したのに2時間で読んじゃったよ・・・」

と、ちょっと、残念な気持ちになってしまうことが珍しくありません。
図書館で借りることがほとんどなので、そんなに多くありませんけど
せっかく買った本は、ながーく楽しみたいものです。

そういう意味で、この本は非常にお買い得でした。
珍しく買った本ですからね!!!

ポイント

といっても、クレカのポイントがたまっていたので、それを使いました。
前回、奥田英朗さんの「リバー」を買おうとしたとき
(その話はこちらです。→どうしても起きていられない
そうだ、ポイントがたまっているから、それで買っちゃおう!
と、思っていたのに、本を検索して購入手続きに入ったときには
そのことをすっかり忘れていて、うっかりカード払いにしてしまいました。

そういうわけで、今回はリベンジだ!とばかりに
しっかりポイントを使って購入しました。
2200円分のポイントを使いましたが、
4日間も楽しめて、間違いなく何度も読み返すだろうと思いますので
非常にコスパがよく、お買い得な一冊でした!


忘れん坊将軍

昭和39年生まれの59歳、専業主婦です。 新幹線、首都高速、武道館などなど同い年のものがたくさんあります。 還暦目前のせいか、あれもこれも忘れてしまう困ったちゃんです。